なん-ぞ 【何ぞ】 >[一]分類連語 なんだ。なんなのか。「なぞ」とも。出典枕草子 頭の中将の「なんぞ。司召(つかさめ)しなども聞こえぬを」[訳] なんなのか。宮中官吏の任命式(の話)なども聞こえていないのに。 なりたち代名詞「なに」+係助詞「ぞ」からなる「なにぞ」の変化した語。 >[二]副詞①どうして…か。なぜ…か。▽理由への疑問の意を表す。出典徒然草 九二「なんぞ、ただ今の一念において、直ちにすることの甚だ難き」[訳] どうして、現在の一瞬において、すぐに実行することがひどく難しいのか。②どうして…か、いや、…ない。▽反語の意を表す。出典宇治拾遺 五・四「なんぞ志を遂げざらん」[訳] どうして(極楽往生の)志を遂げないことがあろうか、いや、遂げないことはない。③なにか。なにかしら。◇近世語。 参考「なにぞ」の変化した語。 な-ぞ 【何ぞ】 副詞①どうして(…か)。なぜ(…か)。▽疑問の意を表す。出典土佐日記 二・一「『なぞ、ただごとなる』と、ひそかにいふべし」[訳] 「なぜ、こんなに平凡(な歌)なんだろうか」と、こっそり言うに違いない。②どうして…か、いや、…ではない。▽反語の意を表す。出典万葉集 一七七七「君なくはなぞ身装(よそ)はむくしげなる黄楊(つげ)の小櫛(をぐし)も取らむとも思(も)はず」[訳] あなたがいないならば、どうしてこの身を飾りましょうか、いや、飾ったりなどしない。櫛箱にあるつげの小櫛も手に取ろうとも思わない。 語法「なぞ」は疑問語であるため、文中に係助詞がなくても、文末の活用語は連体形で結ぶ。 な-ぞ 【何ぞ】 分類連語何か。何ものか。何ごとか。どうしたことか。▽文末に用いて不明の事物、状態やその原因などを問いかける。出典更級日記 初瀬「行きちがふ馬も車も、徒歩(かち)人も、『あれはなぞ、あれはなぞ』と」[訳] (私どもと)すれちがう馬(に乗った人)も、牛車(に乗った人)も、(また)徒歩の人も「あれは何か。あれは何か」と。 なりたち代名詞「なに」+係助詞「ぞ」からなる「なにぞ」が変化した「なんぞ」の撥音(はつおん)「ん」が表記されない形。 なに-ぞ 【何ぞ】 分類連語(一)〔「なに」が代名詞の場合〕①なんだ。出典伊勢物語 六「『かれはなにぞ』となむ男に問ひける」[訳] 「あれはなんだ」と男にたずねた。②〔体言に助詞「か」の付いた形に続けて〕…か何か。出典新古今集 哀傷・伊勢物語六「白玉かなにぞと人の問ひしとき」[訳] ⇒しらたまか…。(一)〔「なに」が副詞の場合〕なぜまあ。どうしてまあ。出典万葉集 三三七三「なにそこの児(こ)のここだ愛(かな)しき」[訳] ⇒たまがはに…。◆「ぞ」は係助詞。 |