か・ふ 【交ふ】 >[一]他動詞 ハ行下二段活用活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ} (互いに)さし交わす。入れ違わせる。出典万葉集 一九五「しきたへの(=枕詞(まくらことば))袖(そで)かへし君」[訳] (かつて)袖をさし交わした君。 >[二]補助動詞 ハ行四段活用活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}〔動詞の連用形に付いて〕互い違いに…する。交差して…する。「行きかふ」「吹きかふ」「散りかふ」「飛びかふ」 まじ・ふ 【交ふ】 他動詞 ハ行下二段活用活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}①交ぜる。混合させる。まぜ合わせる。出典万葉集 一九三九「五月(さつき)の玉にまじへて貫(ぬ)かむ」[訳] 五月の薬玉(くすだま)に交ぜて一緒に貫きとどめよう。②交差させる。まじえる。出典将門記 「刃(やきば)をまじへて合戦(かふせん)す」[訳] 刃をまじえて合戦する。 ちが・ふ 【違ふ・交ふ】 >[一]自動詞 ハ行四段活用活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}①行きかう。交錯する。出典枕草子 春はあけぼの「闇(やみ)もなほ蛍の多く飛びちがひたる」[訳] 月の出ていない夜もやはり、蛍がたくさん飛び行きかっている(のがおもしろい)。②行き違いになる。遭(あ)わないようにする。出典平家物語 八・室山「木曾(きそ)にちがはんと、…播磨(はりま)の国へ下る」[訳] (行家は)木曾義仲(よしなか)に遭わないようにしようと、…播磨の国(兵庫県)へ下る。③外れる。それる。④相違する。食い違う。背く。出典曾我物語 四「母や師匠の御心にちがはん事、いかがすべきなれども」[訳] 母や師の御心に背くことはどうすればよいかと思うが。 >[二]他動詞 ハ行下二段活用活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}①交差させる。出典徒然草 二〇八「紐(ひも)を結(ゆ)ふに、上下(かみしも)よりたすきにちがへて」[訳] 紐を結ぶのに、上下からたすき掛けに交差させて。②悪夢を吉夢に変える。夢違(たが)えをする。出典蜻蛉日記 上「しばしば夢のさとしありければ、ちがふるわざもがなとて」[訳] しばしば夢のおつげがあったので、夢違えをする方法があったらなあと思って。③相違させる。変える。出典平家物語 三・法印問答「理運左右(さう)に及ばぬことを、ひきちがへさせ給(たま)ふは」[訳] 道理にかなって異議がないことを変えなさるのは。④間違える。 参考類義の語に「たがふ」がある。「たがふ」が、自分や相手の予想・意向と食い違う意であるのに対して、「ちがふ」は、具体的な動作が互いに交差したり行き違ったりする意が本義。なお、「ちがふ」は、古くは「…ちがふ」の形の複合動詞として用いられることが多い。 |