おぼえ 【覚え】 名詞① 評判。世評。▽世間からの思われ方。出典枕草子 鳥は「人をも、人げなう、世のおぼえあなづらはしうなりそめにたるを」[訳] 人間でも、人並みでなく、世間の評判が軽く扱ってもかまわないように(悪く)なり始めた人のことを。②〔多く「御覚え」の形で〕寵愛(ちようあい)。目上の人からよく思われること。かわいがられること。出典源氏物語 桐壺「いとまばゆき、人の御おぼえなり」[訳] とても見ていられないほどの(天皇の桐壺更衣(きりつぼのこうい)に対する)ご寵愛である。③感じ。感覚。出典枕草子 宮にはじめてまゐりたるころ「振りかくべき髪のおぼえさへあやしからむと思ふに」[訳] 振りかけて隠すべき額髪(ひたいがみ)の感じまでも見苦しいだろうと思うと。④記憶。心あたり。思い当たること。出典源氏物語 若紫「扇を鳴らし給(たま)へば、おぼえなきここちすべかめれど」[訳] (人を呼ぶのに)扇をお鳴らしになると、心あたりがない感じがしているに違いないようだが。⑤(腕前などの)自信。出典宇治拾遺 二・一三「おぼえある力、異人(ことひと)よりはすぐれ」[訳] 自信のある力は、他人よりはまさっていて。 |