き-しょく 【気色】 >[一]名詞① 顔色。表情。機嫌。出典平家物語 三・足摺「入道相国(しやうこく)のきしょくをもうかがうて、迎へに人を奉らん」[訳] 入道相国(=平清盛)の機嫌をうかがってから、迎えに人を差し上げよう。②〔「御気色」の形で〕意向。意図。おぼしめし。ご寵愛(ごちようあい)。出典平家物語 二・少将乞請「『さるにてもこれへ』と、御きしょくありければ」[訳] 「それにしてもここへ(呼べ)」と、ご意向を示されたので。③気分。病状。出典武悪 狂言「きしょくも段々快うござるによって」[訳] 気分もしだいによくなっていますので。◆「きそく」とも。 >[二]―す自動詞 サ行変格活用顔つきをする。(改まった)ようすをする。出典宇治拾遺 一五・三「武正(たけまさ)ことにきしょくして渡る」[訳] (関白殿下がご覧になっているから)武正は特に改まったようすをして通る。 参考「気色」の漢音読み。呉音読みは「けしき」。「けしき」が中古の仮名文に多く使われたのに対し、「きしょく」は中古末期からおもに和漢混交文に使われた。 き-そく 【気色】 名詞①「きしょく >[一]①」に同じ。出典徒然草 一五二「『あな尊(たふと)の気色(けしき)や』とて、信仰(しんがう)のきそくありければ」[訳] 「なんと尊いようすよ」と言って、信頼し、尊敬する表情があったので。②「きしょく >[一]②」に同じ。出典大鏡 道隆「御前(おまへ)に参り給(たま)ひて、御きそくたまはり給ひければ」[訳] 天皇の御前に参上なさって、ご意向をおうかがいなさったところ。 け-しき 【気色】 名詞①(自然の)ようす。模様。出典枕草子 正月一日は「正月(むつき)一日は、まいて空のけしきもうらうらと」[訳] 正月一日は、一段と空のようすもうららかで。②(人の)ようす。そぶり。表情。態度。出典竹取物語 かぐや姫の昇天「切(せち)に物思へるけしきなり」[訳] しきりに物思いにふけっているようすである。③きざし。兆候。出典枕草子 心もとなきもの「子産むべき人の、そのほど過ぐるまでさるけしきもなき」[訳] 子を産む予定の人が、その時期を過ぎても産まれるきざしがないの(は、不安である)。④機嫌。心の動き。出典土佐日記 一・一四「かぢとり、けしき悪(あ)しからず」[訳] 船頭は、機嫌が悪くない。⑤意向。心に抱いている考え。出典源氏物語 桐壺「春宮(とうぐう)よりも御けしきあるを」[訳] 皇太子からも、(妻にしたいとの)ご意向があるのを。⑥特別な事情。わけ。出典源氏物語 葵「若き人にて、けしきもえ深く思ひ寄らねば」[訳] 若い女房で、特別な事情も深くは察することができないので。 参考「けしき」と「けはひ」の違い 「けしき」が視覚でとらえた自然・人などのようすを表すのに対して、類義語の「けはひ」は、視覚によってはとらえられない、あたりにただよう雰囲気を表す。 |