う・し 【憂し】 >[一]形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ} ①つらい。苦しい。出典伊勢物語 四「人の行き通ふべき所にもあらざりければ、なほうしと思ひつつなむありける」[訳] 人が通っていくことのできるような所ではないので、ますますつらいと思っているのだった。②わずらわしい。嫌いだ。いやだ。出典紫式部日記 消息文「世の中ことわざしげくうきものに侍(はべ)りけり」[訳] 世の中というものはいろいろなことをする人がいて、わずらわしいものでございました。③恨めしい。出典更級日記 大納言殿の姫君「をぎの葉の答ふるまでも吹き寄らでただに過ぎぬる笛の音(ね)ぞうき」[訳] 荻(おぎ)の葉と呼ばれる人が答えるまで笛を吹いて寄ってこないで、さっと通り過ぎてしまった笛の音の主が恨めしい。 >[二]補助形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}〔動詞の連用形に付いて〕(…するのが)つらい。(…するのが)いやだ。出典源氏物語 夕顔「咲く花に移るてふ名は包めども折らで過ぎうきけさの朝顔」[訳] 咲く花に心が移るという言葉はつつしむけれど、折らずにこのまま帰るのがつらい今朝の朝顔の花です。 参考「うし」と「つらし」の違い 「うし」は、自分自身の、思い通りにならず晴れ晴れとしない(内にこもる)気持ちが強く、「つらし」は、自分に対する他人の仕打ちを恨む(外に向かう)気持ちが強い。 |