うつく・し 【愛し・美し】 形容詞 シク活用活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ} ①いとしい。出典万葉集 八〇〇「父母(ちちはは)を見れば尊し妻子(めこ)見ればめぐしうつくし」[訳] 父と母を見ると尊い、妻と子を見ると切ないほどかわいくいとしい。②かわいい。愛らしい。出典枕草子 うつくしきもの「うつくしきもの。瓜(うり)にかきたるちごの顔」[訳] かわいいもの。瓜に描いたこどもの顔。③美しい。きれいだ。出典平家物語 六・紅葉「はじ・かへでの色うつくしうもみぢたるを植ゑさせて」[訳] はじやかえでの葉の色が美しく紅葉したのを植えさせて。◇「うつくしう」はウ音便。④見事だ。りっぱだ。申し分ない。出典源氏物語 少女「大学の君、その日の文うつくしう作り給(たま)ひて」[訳] 夕霧の君はその日の試験の詩文を見事にお作りになって。◇「うつくしう」はウ音便。⑤〔近世以降連用形を副詞的に用いて〕手際よく円満に。きれいさっぱりと。出典西鶴織留 浮世・西鶴「うつくしう出替はりまで使うて暇(いとま)出さるるは」[訳] 手際よく円満に交代期まで使って暇を出されるのは。◇「うつくしう」はウ音便。 めぐ・し 【愛し・愍し】 形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}①いたわしい。かわいそうだ。出典万葉集 二五六〇「めぐくや君が恋に死なする」[訳] かわいそうにもあなたが恋い死にさせるのですか。②切ないほどかわいい。いとおしい。出典万葉集 八〇〇「父母(ちちはは)を見れば尊し妻子(めこ)見ればめぐし愛(うつく)し」[訳] 父と母を見ると尊い、妻と子を見ると切ないほどかわいくいとしい。◆上代語。 は・し 【愛し】 形容詞 シク活用活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}愛らしい。いとおしい。慕わしい。出典万葉集 四三三一「長き日(け)を待ちかも恋ひむはしき妻らは」[訳] 長き日々を待ち恋うことだろうかいとおしい妻たちは。◆上代語。 いと・し 【愛し】 形容詞 シク活用活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}①かわいい。出典歌念仏 浄瑠・近松「お夏様がいとしくは」[訳] お夏様がかわいいのなら。②気の毒だ。哀れだ。出典冥途飛脚 浄瑠・近松「見つけられてはいとしいこと」[訳] 見つけられては気の毒なこと。◆「いとほし」の変化した語。中世末期からの語。 うるは・し 【麗し・美し・愛し】 形容詞 シク活用活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}①壮大で美しい。壮麗だ。立派だ。出典古事記 景行「倭(やまと)は国のまほろばたたなづく青垣(あをがき)山ごもれる倭しうるはし」[訳] ⇒やまとは…。②きちんとしている。整っていて美しい。端正だ。出典源氏物語 若紫「同じ小柴(こしば)なれど、うるはしうしわたして」[訳] (ほかと)同じ小柴垣だが、きちんと作りめぐらして。◇「うるはしう」はウ音便。③きまじめで礼儀正しい。堅苦しい。出典大鏡 道隆「この中納言参り給(たま)へれば、うるはしくなりて、ゐなほりなどせられければ」[訳] この中納言が参上なさったので、皆が堅苦しくなって、いずまいを正したりなさったので。④親密だ。誠実だ。しっくりしている。出典伊勢物語 四六「昔、男、いとうるはしき友ありけり」[訳] 昔、男が、とても親密な友人をもっていた。⑤色鮮やかだ。出典土佐日記 二・四「くさぐさのうるはしき貝・石など多かり」[訳] いろいろの色鮮やかな貝や石などがたくさんある。⑥まちがいない。正しい。本物である。出典平家物語 一二・紺搔之沙汰「故左馬頭(さまのかみ)義朝(よしとも)のうるはしきかうべとて」[訳] 亡き左馬頭義朝のまちがいない首だといって。 参考⇒うつくし うるわし 【麗し・美し・愛し】 ⇒うるはし おし 【鴛鴦・惜し・愛し】 ⇒をし |