おとど 【大殿・大臣】 名詞① 御殿。▽身分の高い人のすまい、またはその中の部屋の尊敬語。出典源氏物語 若紫「おとどの造りざま、しつらひざま、更にもいはず」[訳] 御殿の造り具合や、飾り付けのようすなどは言うまでもなく(すばらしく)。②大臣・公卿(くぎよう)の尊敬語。出典大鏡 時平「このおとど、子どもあまたおはせしに」[訳] この大臣(=菅原道真(すがわらのみちざね))には、子供がたくさんいらっしゃったが。③女主人の尊敬語。出典源氏物語 野分「北のおとどのおぼえを思ふに」[訳] 北の御殿の御方の評判を思うと。④女房・乳母などの尊敬語。出典源氏物語 玉鬘「おとど、おびえて色もなくなりぬ」[訳] 乳母殿は、おびえて顔色もなくなった。 おほい-どの 【大殿】 名詞①大臣の邸宅。大臣家。出典源氏物語 桐壺「おほいどのに二、三日など、絶え絶えにまかで給(たま)へど」[訳] (左)大臣家に二、三日など、とぎれとぎれに下がっていらっしゃるが。②大臣殿。▽「大臣」の尊敬語。 おほ-との 【大殿】 名詞①立派な御殿。お屋敷。▽宮殿や貴人の邸宅の尊敬語。出典万葉集 二九「大宮はここと聞けどもおほとのはここと言へども」[訳] (天智(てんじ)天皇の)皇居はここと聞くけれども、御殿はここだと言うけれども。②大臣殿。▽「大臣」の尊敬語。出典枕草子 大蔵卿ばかり「おほとのの新中将宿直(とのゐ)にて」[訳] 大臣殿(=左大臣道長)の(お子の)新中将が宿直(しゆくちよく)で。③貴人である当主の父をいう尊敬語。また、若殿に対して貴人である当主をいう尊敬語。出典太平記 一〇「おほとのばかりこそいまだ葛西(かさい)の谷(やつ)に御座候へ」[訳] 大殿だけはまだ葛西の谷にいらっしゃいます。◆「おほ」は接頭語。 |