むか・ふ 【向かふ・対ふ】 >[一]自動詞 ハ行四段活用活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ} ①向き合う。相対する。対座する。出典徒然草 一七〇「人とむかひたれば、ことば多く、身もくたびれ、心もしづかならず」[訳] 人と対座していると、口数も多くなり、からだもくたびれ、心も落ち着かない。②出向く。赴く。出典平家物語 六・小督「御書をたまはってむかひ候はん」[訳] お手紙をいただいて出向きましょう。③敵対する。対抗する。はむかう。出典平家物語 七・願書「蟷螂(たうらう)の斧(をの)をいからして、隆車(りゆうしや)にむかふがごとし」[訳] かまきりがかまを振りかざして、大きな車にはむかうようなものである。④匹敵する。肩を並べる。かなう。出典伊勢物語 九四「千々(ちぢ)の秋一つの春にむかはめや紅葉(もみぢ)も花もともにこそ散れ」[訳] たくさんの秋が一つの春にかなうだろうか、いや、かなわない。しかし、秋の紅葉も春の花も同じように散ってしまうものである。 >[二]他動詞 ハ行下二段活用活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}①向かい合わせる。向ける。出典蜻蛉日記 上「川にむかへて、簾(すだれ)巻き上げて見れば」[訳] (牛車(ぎつしや)を)川に向かい合わせて、簾を巻き上げて(外の景色を)見ると。②出向かせる。出典平家物語 二・烽火之沙汰「入道がもとへ討手(うつて)なんどやむかへんずらん」[訳] 入道(=平清盛)のところへ討伐の軍勢などを出向かせようとするだろうか。 |