きび・し 【厳し】 形容詞 シク活用活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ} ①すきまがない。密だ。出典東関紀行 「松きびしく生ひつづき」[訳] 松がすきまなく生え連なって。②厳重だ。つけいるすきがない。出典徒然草 一一「周りをきびしく囲ひたりしこそ、少しことさめて」[訳] 周囲を厳重に囲ってあったことは、少し興がさめて。③いかめしい。厳かだ。出典枕草子 内裏は、五節の頃こそ「帳台の夜、行事の蔵人(くらうど)のいときびしうもてなして」[訳] 帳台の試みの夜、行事の蔵人がたいそういかめしくかまえて。◇「きびしう」はウ音便。④険しい。出典梁塵秘抄 四句神歌「すぐれて山きびし」[訳] 格別に山が険しい。 いつか・し 【厳し】 形容詞 シク活用活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}いかめしく荘重だ。おごそかで立派だ。出典源氏物語 少女「節会(せちゑ)の日々、内裏(うち)の儀式をうつして、昔の例(ためし)よりも事添へて、いつかしき御有様なり」[訳] 節会の日には、宮中の儀式をまねて、昔の例よりも新しい行事を付け加えて、おごそかで立派なごようすである。 いか・し 【厳し】 >[一]形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}激しく荒々しい。出典源氏物語 葵「猛(たけ)くいかきひたぶる心出(い)できて」[訳] 強く激しく荒々しい向こう見ずな心が出てきて。 >[二]形容詞 シク活用活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}①いかめしく立派だ。②勢いが盛んだ。 参考 >[二]は上代語で、多くは終止形(語幹)が体言を修飾したり、助詞「の」を伴ったりして使われた。「いかしの御世(みよ)」など。 いつく・し 【厳し】 形容詞 シク活用活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}①威厳がある。おごそかだ。いかめしい。出典万葉集 八九四「皇神(すめかみ)のいつくしき国」[訳] 皇室の祖先のおごそかな国。②きびしく、厳格だ。出典源氏物語 匂宮「いつくしうはもてなし給(たま)はず」[訳] 厳格にはお取り計らいなさらず。◇「いつくしう」はウ音便。③端正で美しい。出典今昔物語集 一・三「めでたくいつくしき女」[訳] すばらしく端正で美しい女。 語の歴史③は、室町時代に入ってさらに「うつくし」と混同され「かわいらしい」の語義も生じた。 |