さぶら・ふ 【侍ふ・候ふ】 >[一]自動詞 ハ行四段活用活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ} ①お仕え申し上げる。おそばにお控え申し上げる。▽貴人のそばに仕える意の謙譲語。出典枕草子 雪のいと高う降りたるを「物語などして集まりさぶらふに」[訳] 話などをしながら(女房たちが)集まり(中宮のおそばに)お控え申し上げているときに。②参る。参上する。うかがう。▽「行く」「来(く)」の謙譲語。出典枕草子 大進生昌が家に「さぶらはむはいかに、いかに」[訳] (おそばに)うかがったとしたら、どうか。どうか。③(貴人のそばに)あります。ございます。▽「あり」の謙譲語。出典枕草子 無名といふ琵琶の御琴を「御前(ごぜん)にさぶらふ物は、御琴も御笛もみなめづらしき名つきてぞある」[訳] 天皇のお手元にございます物は、お琴もお笛もみなすばらしい名前が付いている。④あります。ございます。▽「あり」の丁寧語。出典更級日記 かどで「物語の多くさぶらふなる、あるかぎり見せ給(たま)へ」[訳] 物語がたくさんございますそうですが、(それを)残らず全部お見せください。 >[二]補助動詞 ハ行四段活用活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}〔活用語の連用形、および接続助詞「て」に付いて〕…ます。…(で)あります。…(て・で)ございます。▽丁寧の意を表す。出典宇治拾遺 九・三「けふしも、かしこく参りさぶらひにけり」[訳] 今日という今日に、ちょうど都合よく参りました。 参考「さぶらふ」は後「さむらふ」「さうらふ」と語形が変化するが、『平家物語』では女性は「さぶらふ」、男性は「さうらふ」を用いるという使い分けがあった。 さむら・ふ 【候ふ・侍ふ】 >[一]自動詞 ハ行四段活用活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}「さうらふ >[一]」に同じ。出典鳥追舟 謡曲「めのとの科(とが)もさむらはず」[訳] 後見の人の過失もございません。 >[二]補助動詞 ハ行四段活用活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}「さうらふ >[二]」に同じ。出典松風 謡曲「あまりに懐かしうさむらひて」[訳] あまりに懐かしゅうございまして。 参考「さぶらふ」の変化した語。謡曲で女性の言葉として用いられる。 さ-もら・ふ 【候ふ・侍ふ】 自動詞 ハ行四段活用活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}①ようすを見ながら機会をうかがう。見守る。出典万葉集 二〇九二「あらたまの(=枕詞(まくらことば))月を重ねて妹(いも)に逢(あ)ふ時さもらふと立ち待つに」[訳] 月を重ねて、妻に会う機会をうかがって、立って待っていると。②貴人のそばに仕える。伺候する。出典万葉集 一八四「東(ひむがし)の滝(たぎ)の御門(みかど)にさもらへど」[訳] 東の水の激しく流れるところにある御門に伺候しているが。◆「さ」は接頭語。 |