いふかひ-な・し 【言ふ甲斐無し】 形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ} ①言ってもしかたがない。どうしようもない。出典枕草子 御前にて人々とも「怪しがり言へど、使ひのなければいふかひなくて」[訳] 不審がっていろいろ言うけれど、(それを持ってきた)使いの者がいないので、どうしようもなくて。②情けない。ふがいない。つまらない。出典伊勢物語 二三「女、親なく、たよりなくなるままに、もろともにいふかひなくてあらむやはとて」[訳] 女が、親がなくなり、よりどころがなくなるにつれて、(男はこの妻と)ともに、ふがいないさまでいてよいだろうか、よくはないと思って。③身分が低い。いやしい。出典堤中納言 虫めづる姫君「男(を)の童(わらは)の、ものおぢせず、いふかひなきを召し寄せて」[訳] 男の子で、何も怖がらず、身分のいやしいのをお呼び寄せになって。④たわいない。幼稚である。出典源氏物語 若紫「いで、あな幼や。いふかひなうものし給(たま)ふかな」[訳] いやもう、まあ子供っぽいことよ。たわいなくいらっしゃることよ。◇「いふかひなう」はウ音便。 参考動詞「いふ」の連体形に名詞「かひ」と形容詞「なし」が付いて一語化したもので、「言うだけのかいがない」が本来の意味。 |