よ・し 【良し・好し・善し】 >[一]形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ} ①りっぱだ。上等だ。出典平家物語 一一・能登殿最期「判官(はうぐわん)を見知りたまはねば、物具(もののぐ)のよき武者をば判官かと目をかけて、馳(は)せまはる」[訳] (能登(のと)殿は)判官(=源義経)の顔をご存じないので、鎧(よろい)・兜(かぶと)のりっぱな武士を判官かと目をつけて、走り回る。②美しい。きれいだ。出典更級日記 物語「盛りにならば、容貌(かたち)も限りなくよく、髪もいみじく長くなりなむ」[訳] (私も)年ごろになったならば、顔かたちもこの上なく美しく、きっと髪もすばらしく長くなるだろう。③すぐれている。善良だ。賢い。出典枕草子 うらやましげなるもの「女児も、男児(をのこご)も、法師も、よき子ども持たる人、いみじううらやまし」[訳] (その子が)女の子でも、男の子でも、(また)坊さん(になっている子)でもすぐれている子どもを持っている人はたいそううらやましい。④高貴だ。身分が高く、教養がある。上品だ。出典枕草子 にくきもの「まことによき人のし給(たま)ひしを見しかば、心づきなしと思ふなり」[訳] 本当に高貴な方が(品のないことを)なさったのを見たので、気にくわないと思うのだ。⑤上手だ。巧みだ。すぐれている。出典土佐日記 一・一一「この歌、よしとにはあらねど、げにと思ひて、人々忘れず」[訳] この歌は上手だというのではないが、(歌の心情を)なるほどと思って、人々は忘れない。⑥栄えている。豊かだ。幸せだ。出典伊勢物語 一六「貧しく経(へ)ても、なほ昔よかりし時の心ながら」[訳] 貧しく暮らしていても、依然として昔栄えていたときの心のままで。⑦感じがよい。快い。楽しい。好ましい。出典徒然草 一四一「都の人は、ことうけのみよくて、まことなし」[訳] 都の人は、口先の返事だけは感じがよくても、誠実味がない。⑧ちょうどよい。適当だ。都合がよい。ふさわしい。出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち「三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば」[訳] 三か月ほどたつうちに、ちょうどよい大きさの大人になったので。⑨親しい。親密だ。出典枕草子 故殿の御服のころ「よき仲なれば、聞かせてけり」[訳] 親しい仲なので、聞かせてしまった。 >[二]補助形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}〔動詞の連用形に付いて〕…しやすい。出典古今集 雑下「世の憂(う)きよりは住みよかりけり」[訳] (山里の暮らしはわびしかったが)俗世間よりは暮らしやすかったよ。 参考「よし」と「よろし」の違い 「よし」は積極的にすぐれていると認められるようすを表し、「よろし」は消極的にまあよいと認められるようすを表す。「よし」の反対語は「あし」で、「よろし」の反対語は「わろし」。 え・し 【善し・良し】 形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}よい。出典日本書紀 天智「み吉野(えしの)の吉野の鮎(あゆ)鮎こそは島傍(しまへ)もえき」[訳] み吉野の、その吉野の川の鮎。その鮎こそ島のほとりに住むのもよいだろう。 |