もの 【物】 名詞① 物。衣服・飲食物・楽器など形のある存在。▽前後の関係からそれとわかるので明示せずにいう。出典源氏物語 須磨「ものの色、し給(たま)へる様など、いと清らなり」[訳] 衣服の色、なさっているようすなど、大変すばらしい。②物事。もの。芸能・音楽・行事など形のない存在。▽前後の関係からそれとわかる事柄を明示せずにいう。出典源氏物語 絵合「道々に、ものの師あり」[訳] 物事のそれぞれの分野に、物事の(=その道の)師匠がいる。③もの。こと。▽思ったり話したりすることの内容。出典竹取物語 かぐや姫の昇天「常よりももの思ひたるさまなり」[訳] いつもよりもものを思っているようすである。④人。者。出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち「竹取の翁(おきな)といふものありけり」[訳] 竹取の翁という人がいたということだ。◇「者」とも書く。⑤ある所。出典枕草子 僧都の御乳母のままなど「あからさまにものにまかりたりしほどに」[訳] ちょっとある所に出かけていた間に。⑥怨霊(おんりよう)。鬼神。物の怪(け)。超自然的な恐ろしい存在。出典竹取物語 かぐや姫の昇天「ものにおそはるるやうにて、あひ戦はむ心もなかりけり」[訳] 何か恐ろしいものに脅かされるような状態で、戦い合おうという気持ちもなくなったのであった。 もの- 【物】 接頭語〔形容詞・形容動詞などに付いて〕なんとなく…。▽漠然とした様態を表す語を作る。「もの恐ろし」「ものめづらし」「ものはかなし」「もの清げ」「ものまめやか」 |