や・く 【焼く】 >[一]他動詞 カ行四段活用活用{か/き/く/く/け/け} ①燃やす。焼く。出典伊勢物語 一二「武蔵野(むさしの)は今日(けふ)はなやきそ」[訳] 武蔵野を今日は焼かないでくれ。②熱する。加熱する。出典万葉集 九三八「浜を良(よ)み諾(うべ)も塩やく」[訳] 浜が良いのでなるほど塩を焼く(=熱して製塩する)。③悩ます。思い焦がれさせる。出典万葉集 三二七一「わが心やくも我なり愛(は)しきやし君に恋ふるもわが心から」[訳] 私の心を悩ますのも私自身である。いとしいあなたに恋をしているのも私の心からなのだから。 >[二]自動詞 カ行下二段活用活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}①燃える。焼ける。出典方丈記 「そのたび、公卿(くぎやう)の家十六やけたり」[訳] その(安元の大火の)とき、公卿の家が十六軒燃えた。②熱せられる。熱くなる。出典平家物語 六・入道死去「石や鉄(くろがね)なんどのやけたるやうに」[訳] 石や鉄などが熱せられているように。③思い乱れる。思い焦がれる。出典万葉集 五「海処女(あまをとめ)らが焼く塩の思ひそやくるわが下ごころ」[訳] 年若い海女(あま)たちが焼く塩のように、恋に思い焦がれる私の心の底よ。 |