さら-ば 【然らば】 >[一]接続詞① それならば。そうしたら。▽順接の仮定条件を表す。出典紫式部日記 寛弘五・一一・一「和歌一つづつ仕(つか)うまつれ。さらば許さむ」[訳] (お祝いの)和歌を一首ずつお詠み申せ。そうしたら許そう。②〔下に打消の語を伴って〕それなら…すべきなのに(そうせずに)。それなのに。しかるに。▽逆接の確定条件を表す。出典平家物語 八・鼓判官「『急ぎ追討せさせ給(たま)へ』と申しければ、法皇、さらばしかるべき武士には仰せで」[訳] 「急いで追討させなさいませ」と申し上げたところ、法皇は、それならふさわしい武士に仰せをすべきなのに武士にはお言い付けなさらずに。 >[二]感動詞それでは。では。さようなら。▽別れのあいさつの語。出典源氏物語 夢浮橋「『さらば』とて帰り給(たま)ふ」[訳] 「それでは」とお帰りになる。 参考ラ変動詞「さり」の未然形に接続助詞「ば」が付いて一語化したもの。 しから-ば 【然らば】 接続詞そうであるならば。それならば。出典平家物語 一〇・内裏女房「三種の神器(しんぎ)を都へ返し入れ奉れ。しからば八島(やしま)へ返さるべし」[訳] 三種の神器を都へお返し申し上げよ。それならば八島へかえしてやろう。 参考ラ変動詞「しかり」の未然形に接続助詞「ば」が付いて一語化したもの。漢文訓読的な語であるため、平安時代の女流仮名文学には現れず、代わりに「さらば」が用いられた。 |