さ-し-ながら 【然しながら】 副詞① 全部。すっかり。出典蜻蛉日記 中「宿見れば蓬(よもぎ)のかどもさしながら荒るべきものと思ひけむやぞ」[訳] お屋敷を見ると、よもぎが茂った門も閉ざしたままで、すっかり荒れてしまうとはどうして思ったであろうか、いや、決して思いもよらなかった。②あたかも。さながら。出典拾遺集 賀「大空に群れたる鶴(たづ)のさしながら思ふ心のありげなるかな」[訳] 大空に群がっている無心の鶴(つる)もあたかもあなたの長寿を祝う心があるように見えることよ。 しかし-ながら 【然しながら】 >[一]副詞①そのままそっくり。ことごとく。出典平家物語 七・忠度都落「京都の騒ぎ、国々の乱れしかしながら当家の身の上のことに候ふあひだ」[訳] 京都の騒ぎ、国々の乱れはことごとく当家(=平家)の境遇のことでありますので。②要するに。つまり。結局。出典宇治拾遺 一一・一〇「人のために恨みを残すは、しかしながら、わが身のためにてこそありけれ」[訳] 人のために恨みを残すのは、結局自分自身のため(=自分自身に返ってくるもの)であった。 >[二]接続詞そうではあるが。しかし。◆中世末期以降の用法。 |