ふか・し 【深し】 形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ} ①厚みがある。深い。奥まっている。出典源氏物語 若紫「峰高く、深き岩のうちにぞ、聖(ひじり)入りゐたりける」[訳] 峰が高く、奥まっている岩穴の中に、高徳の僧がこもって住んでいた。②(季節が)たけなわだ。時がたっている。夜が更けている。出典徒然草 一九「のどやかなる日影に、垣根の草萌(も)え出(い)づるころより、やや春ふかくかすみわたりて」[訳] うららかな日ざしに(より)垣根の草が芽を出すころから、しだいに春たけなわでかすみが一面にかかって。③密度が濃い。色が濃い。香りが強い。草木が密生している。出典平家物語 九・宇治川先陣「川霧ふかく立ちこめて、馬の毛も鎧(よろひ)の毛もさだかならず」[訳] 川霧が濃く立ちこめて、馬の毛も鎧の毛もはっきりとはわからない。④なみたいていでない。甚だしい。著しい。出典徒然草 二三六「この獅子(しし)の立ちやう、いと珍し。ふかきゆゑあらん」[訳] この獅子の立ち方はたいへん珍しい。なみたいていでないわけがあるのだろう。⑤(回数が)多い。出典方丈記 「河原近ければ、水の難もふかく」[訳] 河原に近いので、水害も多く。⑥十分である。親密だ。(気持ちが)強い。出典徒然草 七「ひたすら世をむさぼる心のみふかく、もののあはれも知らずなりゆくなん、あさましき」[訳] ただただ現世の利益や欲望に執着する心だけ強く、物事の趣もわからなくなっていくのは、見苦しい。 |