うか・ぶ 【浮かぶ】 >[一]自動詞 バ行四段活用活用{ば/び/ぶ/ぶ/べ/べ} ①浮く。浮かんでいる。出典方丈記 「淀(よど)みにうかぶうたかたは、かつ消えかつ結びて」[訳] (川の)流れの滞っている所に浮かんでいる水の泡は、一方では消え、同時に一方ではできて。②落ち着かない。うわつく。出典源氏物語 夕顔「うかびたる心のすさびに」[訳] うわついた気まぐれで。③思い出される。思い浮かぶ。出典更級日記 物語「空(そら)に覚えうかぶを」[訳] (『源氏物語』の文章が)そらんじて思い出されるのを。④あてにならない。いいかげんだ。出典源氏物語 東屋「ようも案内(あない)せで、うかびたることを伝へける」[訳] よく内情を調べもしないで、いいかげんであること(=縁談)を伝えたものだ。⑤出世する。世に出る。出典源氏物語 澪標「御子(みこ)どもなど沈むやうにものし給(たま)へるを、みなうかび給ふ」[訳] お子様方なども不遇であるようでいらっしゃったが、みな出世しなさる。⑥成仏する。出典梁塵秘抄 法文歌「終(つひ)に我等もうかびなむ」[訳] ついには私たちもきっと成仏するだろう。 >[二]他動詞 バ行下二段活用活用{べ/べ/ぶ/ぶる/ぶれ/べよ}①水面に浮かべる。出典奥の細道 象潟「象潟(きさかた)に舟をうかぶ」[訳] 象潟に舟を浮かべる。②暗記する。暗唱する。出典枕草子 清涼殿の丑寅のすみの「古今の歌二十巻(はたまき)を皆うかべさせ給(たま)ふを御学問にはせさせ給へ」[訳] 『古今和歌集』二十巻を全部暗唱しなさることをご学問になさいませ。③出世させる。世に出す。出典源氏物語 明石「沈めるともがらをこそ、多くうかべ給(たま)ひしか」[訳] (逆境に)沈んでいる人たちを、多く世に出しなさった。④成仏させる。出典宇津保物語 梅の花笠「かのおもとをも、うかべ救はむとて」[訳] あのお方(=母の亡霊)をも、成仏させて救おうということで。 |