はか-な・し 【果無し・果敢無し】 形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ} ①頼りない。むなしい。あっけない。出典宇治拾遺 一・一三「桜ははかなきものにて、かく程なくうつろひさぶらふなり」[訳] 桜はあっけないものであって、このようにすぐに散ってしまうのです。②ちょっとしたことだ。何ということもない。出典枕草子 木の花は「梨(なし)の花、よにすさまじきものにして、近うもてなさず、はかなき文つけなどだにせず」[訳] 梨の花は、まったくおもしろみのないものとして、身近には取り扱わず、ちょっとした手紙を結びつけることなどさえしない。③幼い。たわいない。出典源氏物語 若紫「いとはかなうものし給(たま)ふこそ、あはれにうしろめたけれ」[訳] とても幼なくていらっしゃるのが、どうしようもなく悲しく先が気がかりだ。◇「はかなう」はウ音便。④粗末だ。取るに足りない。出典枕草子 九月二十日あまりのほど「長谷(はせ)に詣(まう)でて、いとはかなき家に泊まりたりしに」[訳] 長谷寺に参詣(さんけい)して、とても粗末な家に泊まったときに。 注意①は事物から受ける感じに、②以下は事物そのものの状態に重点を置いた意味である。 |