ほん 【本】 名詞① 書物。書籍。本。(よりどころとなる)原本。原典。出典枕草子 ありがたきもの「物語・集など書き写すに、ほんに墨つけぬ」[訳] 物語や歌集などを書き写すときに原本に墨をつけないこと。②模範。手本。出典源氏物語 若紫「やがてほんにと思(おぼ)すにや、手習ひ・絵など、さまざまに書きつつ見せ奉り給(たま)ふ」[訳] そのまま手本にとお思いになるのであろうか、(源氏は)手習いや絵などを、さまざまに書いては、(若紫に)お見せ申し上げなさる。③根本。基本。出典日本永代蔵 浮世・西鶴「人は正直をほんとすること」[訳] 人は正直を基本とすること。④本当。真実。まこと。出典曾根崎心中 浄瑠・近松「たんとぶたれさんしたと聞いたが、ほんか」[訳] うんとぶたれなさったと聞いたが、本当か。 もと 【本・元】 >[一]名詞①根もと。幹。出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち「その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける」[訳] その竹の中で、根もとが光る竹が一本あった。②下の方。かたわら。付近。ほとり。出典徒然草 一三「ひとり灯火(ともしび)のもとに文(ふみ)を広げて」[訳] ひとりで灯火の下に書物を広げて。◇「下」とも書く。③(人のいる)所。出典伊勢物語 九「京に、その人の御もとにとて、文(ふみ)書きてつく」[訳] 都へ、ある人のいらっしゃる所にと思って、手紙を書いて託す。◇「許」とも書く。④以前からのもの。昔からあるもの。出典方丈記 「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」[訳] 流れていく川の流れは絶えることがなくて、なおその上に、以前からあった水ではない。◇「旧」「故」とも書く。⑤基本。根本。よりどころ。原因。出典徒然草 一八四「世を治むる道、倹約をもととす」[訳] 世の中を治める方法は、倹約を基本とする。⑥はじめ。起こり。起源。出典徒然草 二一四「『想夫恋(さうぶれん)』といふ楽(がく)は、…もとは『相府蓮(さうふれん)』、文字の通へるなり」[訳] 「想夫恋」という音楽は、…はじめは「相府蓮」という名で、「想夫恋」と音(おん)が通じているのだ。⑦(和歌の)上(かみ)の句。出典枕草子 清涼殿の丑寅のすみの「歌どものもとを仰せられて、『これが末(すゑ)、いかに』と問はせ給(たま)ふに」[訳] 多くの歌の上の句を仰せになられて、「この下の句は何か」とお尋ねになるので。 >[二]副詞以前に。以前から。出典古今集 哀傷・詞書「もとありし前栽(せんざい)もいと繁(しげ)く荒れたりけるを見て」[訳] 以前にあった庭の植え込みもたいそうひどく荒れているのを見て。 -もと 【本】 接尾語…本。…株。▽草木の数を表す。「ひともと」「五(い)つもと柳」 |