あり-がた・し 【有り難し】 形容詞 ク活用活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ} ①めったにない。めずらしい。出典枕草子 ありがたきもの「ありがたきもの。舅(しうと)にほめらるる婿。また、姑(しうとめ)に思はるる嫁の君」[訳] めったにないもの。(それは)舅にほめられる婿。また、姑にかわいがられるお嫁さん。②めったにないほど優れている。貴重だ。出典徒然草 一七七「取りためけん用意ありがたし」[訳] (のこぎりのくずを)ためておいたのであろうその心づかいは、めったにないほど優れている。③生きにくい。過ごしにくい。出典源氏物語 東屋「世の中は、ありがたくむつかしげなるものかな」[訳] 人の世は、生きにくくわずらわしいものよ。④むずかしい。容易でない。出典源氏物語 行幸「さるべきついでなくては、対面もありがたければ」[訳] そのような機会がなければ、会って話すのもむずかしいので。⑤尊い。おそれ多い。出典世間胸算用 浮世・西鶴「これは神仏のこと、末世ならず、ありがたき御事と思ひ」[訳] これは神仏のご加護のしるしで、(それがあるということは)まだ末世ではなく、おそれ多い御ことと思い。 注意現代語では感謝の意を表すが、古文では①の意味に用いられることが多い。 |