|  はな・つ 【放つ】  他動詞 タ行四段活用活用{た/ち/つ/つ/て/て}①身から離す。手放す。出典万葉集 一六八二「裘(かはごろも)扇はなたず山に住む人」[訳] (冬の)皮衣と(夏の)扇を(いつも)手放さずにいるよ、仙人は。②自由にする。解き放す。ばらばらにする。出典源氏物語 鈴虫「この野に虫どもはなたせ給(たま)ひて」[訳] この野に虫たちをお解き放しなされて。③(戸などを)あける。開く。出典源氏物語 末摘花「格子はなちて入れ奉る」[訳] (女房は)格子をあけて(源氏)をお入れ申し上げる。④人手に渡す。譲る。売る。出典宇治拾遺 七・五「価(あたひ)も限らず買はんと申しつるをも、惜しみてはなち給(たま)はずして」[訳] 値段に糸目をつけず買いたいと言いました人があったのに、惜しんで、売りなさらないで。⑤見放す。見捨てる。出典蜻蛉日記 上「なつくべき人もはなてば」[訳] なれ親しむはずの人までも見放すので。⑥(音・声や光を)発する。出す。出典竹取物語 竜の頸の玉「寿詞(よごと)をはなちて」[訳] 祈りの言葉を発し(=唱え)て。⑦(矢を)射る。出典古今著聞集 九「真中(まなか)にあててはなちけるに」[訳] 真ん中をねらって矢を射たが。⑧さしおく。無視する。出典大鏡 師輔「滝口をはなちて、布衣(ほい)の者内裏(うち)に参ることは」[訳] 滝口の武士をさしおいて、無紋の狩衣を着る身分の者が宮中に参上することは。 |