さ・る 【戯る】 自動詞 ラ行下二段活用活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ} ①たわむれる。はしゃぐ。出典枕草子 かたはらいたきもの「旅だちたるところにて、下衆(げす)どもされゐたる」[訳] よそに泊まった先で、(お供の)下男たちがはしゃいでいるの。②才気がある。気が利く。出典源氏物語 紅葉賀「『入(い)りぬる磯(いそ)の』と口ずさみて、口おほひし給(たま)へるさま、いみじうされて、うつくし」[訳] 「入りぬる磯の」と口ずさんで、(袖(そで)で)口もとをお隠しになられた(紫の上の)ようすは、たいへん気が利いて、かわいらしい。③色気がある。出典源氏物語 少女「年の程よりはされてやありけむ」[訳] (惟光(これみつ)の娘は)年齢の割には色気があったのだろうか。④しゃれている。風情がある。趣がある。出典源氏物語 浮舟「されたる常磐木(ときはぎ)の影茂れり」[訳] 風情がある常磐木の姿は枝葉が茂っている。◆後に「ざる」とも。 たわる 【戯る・狂る】 ⇒たはる そぼ・る 【戯る】 自動詞 ラ行下二段活用活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}①たわむれる。ふざける。出典源氏物語 初音「年の内の祝ひ言どもしてそぼれあへるに」[訳] 一年の幸せを願う数々の祝い言を述べて、たわむれあっているところへ。②しゃれる。きどる。出典源氏物語 胡蝶「書きざま今めかしうそぼれたり」[訳] (手紙の)書きようは現代的でしゃれている。 たわぶる 【戯る】 ⇒たはぶる あざ・る 【戯る・狂る】 >[一]自動詞 ラ行四段活用活用{ら/り/る/る/れ/れ}取り乱して動き回る。出典万葉集 九〇四「立ちあざりわれ乞(こ)ひ祈(の)めど」[訳] 取り乱し動き回って私は請い祈ったが。 >[二]自動詞 ラ行下二段活用活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}①ふざける。出典土佐日記 一二・二二「酔(ゑ)ひあきて、…あざれあへり」[訳] ひどく酔っぱらって、…ふざけあっている。②儀式ばらない装いをする。くつろぐ。出典源氏物語 紅葉賀「あざれたる袿(うちき)姿にて」[訳] くつろいだ袿姿で。③機転をきかす。しゃれた振る舞いをする。出典枕草子 職の御曹司におはします頃、西の廂にて「あざれたり。御簾(みす)の前にて、人にを語り侍(はべ)らむ」[訳] (歌は)しゃれている。御簾の前で、女房の方々に披露しましょう。 たは・る 【戯る・狂る】 自動詞 ラ行下二段活用活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}①みだらな行為をする。色恋におぼれる。出典徒然草 三「さりとて、ひたすらたはれたる方(かた)にはあらで」[訳] そうはいっても、すっかり色恋におぼれているというのではなくて。②ふざける。たわむれる。出典万葉集 一七三八「容(かほ)よきによりてそ妹(いも)はたはれてありける」[訳] 自分が美貌であるからと恋人はふざけているのだよ。③くだけた態度をとる。出典源氏物語 藤裏葉「公(おほやけ)ざまは、たはれてあざれたる方(かた)なりし」[訳] 表向きには、くだけた態度をとって、儀式ばらない人であった。 たはぶ・る 【戯る】 自動詞 ラ行下二段活用活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}①遊び興じる。出典万葉集 九〇四「立てれども居(を)れどもともにたはぶれ」[訳] (わが子は)立っていても座っていても(親と)一緒に遊び興じ。②ふざける。冗談を言う。出典徒然草 七五「人にたはぶれ、物に争ひ」[訳] 人にふざけて、物につけては争い。◆「たはむる」の古形。 |